ポンプゲートとは?種類を知って無駄のない選定をするために
水門とポンプを組み合わせたポンプゲート。
ただ排水するだけではなく、水位や流量をコントロールしながら安全に排水を行うための総合設備です。
ポンプゲートには、ポンプの形式やゲートの種類、制御システムの違いに関していくつか違いがあります。
設計の自由度が高い分、選定の難易度が高くなってしまいます。
設置場所の条件や運用条件により、選定の際にはその種類をどう組み合わせていくかを決めなければいけません。
適切なポンプゲートを選ばないと、排水能力不足や逆流による浸水、維持費増大や操作不良など重大なトラブルを招いてしまうかもしれません。
ポンプゲートの種類や選定の流れについて、整理してみました。
ポンプゲートとは
まずはポンプゲートとはどんな施設なのか?
基本的なポンプゲートについての知識について確認していきましょう。
- ポンプゲートの目的
- ポンプゲートの仕組み
- 水門・ゲート設備との違い
- 排水機場との違い
ポンプゲートの目的

ポンプゲートとは、水門(ゲート)とポンプ機能を
組み合わせた水管理施設です。
通常時は水門として機能していますが、自然排水が困難な時にポンプを起動して強制的に排水を行います。
農業用水管理に大きな役割を果たしており、干拓地や低平地での排水路管理では、農地に適切な水位を確保するための施設となっています。
洪水や浸水、逆流を防ぐなどの緊急時の対応や自然排水が困難な低い土地の排水が、主な目的です。
ポンプゲートの仕組み
通常時は水門として機能しますので、ポンプは起動させません。
豪雨時など必要な際にはゲートを閉じて水の流れを止め、ポンプで強制的に排水します。
ポンプゲートはポンプとゲートが一体化しているため、従来の排水機場のような大型の建屋が不要です。
規模によっては、住宅地や狭い水路であっても設置可能となっており、省スペース&低コストで設置できるのがメリットです。
水門・ゲート設備との違い
水門・ゲート設備との違いは、ポンプ機能の有無です。
水門・ゲートはゲート開閉により水を流すか止めるかの、どちらかになります。
自然流下だけでなく、ポンプにより強制排水ができるようになったのがポンプゲートです。
水門・ゲートは水の流れをコントロールする設備であり、ポンプゲートは水を強制的に動かせる水門です。
排水機場との違い
排水機場もポンプで水を排水させる施設のため、ポンプゲートと似ています。
最も異なる点は、排水の規模です。
排水機場は市街地や農地への浸水を防ぐための施設で、比較的規模が大きいです。
ポンプゲートは比較的小規模な水路や排水路に設置され、局所的な排水や逆流を防止します。
排水機場は巨大な排水施設として設置されてきたのに対し、ポンプゲートは小規模でも対応可能な排水設備という位置づけになっています。
農業用と排水用のポンプゲート
ポンプゲートは農業用が目的のものと、排水用が目的のものがあります。
それぞれどんな特徴があり、何が違うのかを理解しておきましょう。
- 農業用ポンプゲートの特徴
- 排水用ポンプゲートの特徴
農業用ポンプゲートの特徴

低い土地や干拓地など自然排水が難しい場所で、農地の水位を守るのが農業用ポンプゲートです。
川から水を取水するのが目的であり、水を安定して取り込むために設置されます。
大雨や洪水のリスクがある時には、農業や農業用施設への水害を防ぐという役割もあります。
水が多すぎる時は排水し、水が足りなければ水門で水位を調整し、適切な量の水を供給する仕組みになっています。
川より低い土地にあり自然に水が流れにくい農地が多いので、強制的に水量を調節できるポンプゲートが必要になります。
排水用ポンプゲートの特徴
農業用ポンプゲートは川から取水するのが主な
目的なのに対し、排水用ポンプゲートは川へ排水するのを目的に設置されるものです。
農地や市街地など川よりも低い土地にたまった水を、川へ排水していきます。
通常時はゲートを開き、自然な水の流れで排水させていきます。
洪水や大雨の時にはゲートで川の水の逆流を防ぎ、ゲートが閉じると自然排水ができなくなるためポンプで排水をしていきます。
ポンプゲートが必要になる条件
ポンプゲートが必要になるのは、水位低く、自然排水が困難な場所です。
またポンプゲートは排水機場よりもコンパクトな場所に設置できるため、用地が限定的であり、排水機場を設置する用地がない場所でも選択できます。
既存の樋管にポンプを設置してコンパクトに対応できるポンプゲートは、建設コストや工期を短縮させたいという場所にも向いています。
設置環境・規模によるポンプゲートの種類

ではポンプゲートの設置環境・規模によるポンプゲートの種類について確認していきましょう。
- 排水機場一体型ポンプゲート
- 小規模水路用ポンプゲート
排水機場一体型ポンプゲート
排水機場一体型ポンプゲートは、排水機場と一体となって設置される大規模なポンプゲートです。
大規模な浸水を防いで、都市を守る巨大な砦のような役割をします。
ポンプゲートなので堤防の外に大規模な建物を準備する必要はなく、ポンプの機能は水門と一体になっています。
毎秒数トンの水を排出できる高出力が特徴です。
小規模水路用ポンプゲート
道路の側溝や住宅の小さな水路といった小規模な場所に設置されるのが、小規模水路用ポンプゲートです。
特定のアンダーパスや低い土地の浸水を防ぐ役割をしてくれます。
例えばスライドゲートと組み合わせると、普段は水門として水位調節を行い、状況によってポンプで排水する、というような柔軟な活用ができます。
扉体の動作機能によるポンプゲートの種類
ゲートの扉体の開閉方法によるポンプゲートの種類です。
- フラップゲート併用型(逆流防止型)
- スルースゲート型(直下式・昇降式)
- 横引き・旋回型(スイング式)
フラップゲート併用型(逆流防止型)
フラップゲート併用型(逆流防止型)は、水圧によって自動的に開閉するフラップゲートとポンプを組み合わせたタイプです。
通常時は自然排水を行い、外水位が上がった時には外からの水圧で自動的に閉まって逆流を防ぐ仕組みになっています。
ゲートが閉まった状態で、ポンプは強制的に排水を行っていきます。
巨大な装置は不要なので、コンパクトに設置したい場所に向いています。
スルースゲート型(直下式・昇降式)
スルースゲート型(直下式・昇降式)は、扉体を上下に昇降させて水の流れを調整するタイプのゲートの扉です。
通常時はゲートを引き上げて開いておき、緊急時にはワイヤーと歯車で垂直に上下させて水路をふさぎます。
開閉量を細かく調節できるので、細かな水位調節が可能なタイプです。
横引き・旋回型(スイング式)
横引き・旋回型(スイング式)は、扉体を横方向に引いたり、回転させたりして開閉するタイプです。
橋の下など高さに制限がある場所でも設置しやすく、比較的大きな開口幅を確保できるのが特徴です。
構造的に大きな数量に対応できるので、大規模な水路や河川に向いています。
ポンプの形式によるポンプゲートの種類

どの向きにポンプを設置するか、という点で種類を分けると、立軸ポンプゲートと横軸ポンプゲートに分けられます。
構造や向き不向きがあるので、設置する現場の状況に合う方を選びましょう。
- 立軸ポンプゲート
- 横軸ポンプゲート
立軸ポンプゲート
立軸ポンプゲートとは、ポンプの回転軸が縦向きに設置されているタイプです。
水を下から上へ汲み上げる構造になっていて、大量排水に向いているのが立軸ポンプゲートです。
水位変動に強く、大規模な排水機場や農地の広域排水に活用されます。
横軸ポンプゲート
横軸ポンプゲートとは、回転軸が横向きに設置されているポンプゲートです。
水を横方向に排水する構造で、コンパクトな設計が可能なタイプです。
小規模水路や農業用の簡易排水であれば横軸ポンプゲートが向いており、省スペースで手軽に設置した場所には横軸ポンプゲートが採用されます。
制御システムによるポンプゲートの種類
ポンプゲートをどう動かすかという方法によっても、種類があります。
現場の人員体制や緊急時の対応などから、適した方法を選んでください。
- 電動ゲート型
- 手動型
- 自動運転型
電動ゲート型

電動ゲート型は、モーターの力でゲートを開閉する方法です。
操作盤にスイッチがあり、比較的少ない力でゲートを操作できるのがメリットです。
電源が必要ではありますが、人員が少なくても
稼働できるため、多くの排水機場で採用されています。
手動型よりも楽に操作ができますし、人が判断をして操作ができるという面から電動ゲート型が
ポピュラーな形となっています。
手動型
人の力でハンドルやレバーを回してゲートを開閉するのが、手動型です。
シンプルな構造で電源不要なので、設置場所を選びません。
停電時でも確実に操作できますし、コストが安いのがメリットです。
ただし開閉には必ず人員が必要になりますし、
人の力で動かすため大規模な施設には不向きです。
自動運転型
ポンプゲートの自動運転型とは、水位やタイマーによって自動でゲートを運転・開閉するタイプです。
無人運転が可能なものがありますし、遠隔操作が可能なので災害時など緊急時にも迅速な対応ができるようになります。
自動運転型の設備を整えるためには初期費用がかかりますし、定期的なメンテナンスも欠かせません。
水門・ゲート設備の種類と特徴
ここで水門・ゲート設備についても詳しく確認しておきましょう。
- スライドゲート(上下開閉式)
- ローラーゲート(大型水門)
スライドゲート(上下開閉式)

扉体を上下にスライドさせて水の流れを調節するのが、スライドゲートです。
電動・手動のどちらにも対応でき、細かな水量の調整ができるシンプルな構造になっています。
大規模施設だと開閉に時間がかかる場合があり、小~中規模の施設に向いています。
ローラーゲート(大型水門)
扉体にローラーをつけて開閉するのが、ローラーゲートです。
主に電動で開閉する仕組みになっており、大型でも軽い力で開閉できるのが特徴です。
高水圧・大流量に対応可能なので、大型施設に向いています。
ポンプゲート選定ポイント
ポンプゲートを選定していく際には、以下のような順で決めていきます。
いくつかポンプゲートの種類があるので、適したタイプを選べるよう選定していきましょう。
- 自然流下で対応できるか
- ポンプ容量と排水能力
- 電動化・自動化の必要性
- 維持管理コストと運用
自然流下で対応できるか
まずは、そもそもポンプが必要なのかを考えてみましょう。
自然排水が可能であれば、ゲートのみでポンプは不要です。
水位差があるか、水路に勾配があるか、などだけでなく、洪水時に逆流のリスクがないかも確認してみてください。
ポンプ容量と排水能力
ポンプが必要であると判断できたら、水の処理能力について考えていきましょう。
能力不足だと浸水のリスクがありますし、過剰設計だとコストが無駄に増えてしまいます。
想定雨量や排水面積、ピーク流量や揚程といった面から過不足のないバランスで設計できるようにしていきましょう。
電動化・自動化の必要性
人員の余裕や規模によって、電動化・自動化を選び、運用方法を検討していきます。
無人や巡回のみを想定しているのであれば自動、常駐管理があるなら手動や電動での運用が可能です。
規模のバランスやコスト、緊急時のリスクなどを考慮して、電動化・自動化の必要性を考えていきます。
維持管理コストと運用
導入後のコストについて考えていきます。
導入コストだけでなく、維持費についても計算して決めていきましょう。
維持費としては、電気代などの運転コスト、人件費などの運営費用、点検やメンテナンス費用がかかってきます。
ポンプゲートのご相談は朝水技研へ
ポンプゲートにはいくつか種類があり、選定についてもポイントがあります。
現場の地形や運転状況、かけられるコストによって最適解が変わりますので、単純な計算式のように答えが出せるものではありません。
ポンプゲートの目的や水門とのトータル設計、
維持管理に関わる内容まで、適切に見通しがたてられているでしょうか。
メリットやデメリットを正しく理解しながら、
専門業者へ相談するのがおすすめです。
できるだけ早い段階で相談できると、見通しが立ちやすくなります。
選定やメンテナンスなど、ポンプゲートや水門に関してのお悩みは朝水技研へぜひご相談ください。