頭首工のゲートの種類は?特徴や違いをわかりやすく解説!
川の水を農地に届けるための頭首工。
農地に水が届くのは当たり前ではなく、頭首工に適切なゲートが設置されているからこそです。
スライドゲートやローラーゲート、ラジアルゲート、ゴム堰など、いろいろな種類がありますが、それぞれどんな特徴があって、どれを選べばいいのでしょうか。
川の特性や頭首工の目的を明確にするのはもちろん、その上でそれぞれのゲートの特徴を理解していなければいけません。
いくつかある頭首工のゲートの種類や操作方法について、ご紹介していきます。
なぜ頭首工ゲートの種類があるのか
頭首工とは河川の上流から農業用水を取水する施設です。
流れの速さや水量は川ごとに特徴が異なるので、それぞれの川に合う頭首工のゲートが設置されています。
頭首工の目的や管理条件という側面からも、設置する頭首工ゲートの種類の選別が求められます。
このため多くの頭首工は可動堰(かどうぜき)として設計されています。
可動堰とは、水位や流量に応じて開閉・調整が可能な構造になっているもので、状況に合わせた柔軟な対応が可能になります。
これからご紹介する頭首工のスライドゲートやローラーゲート、ゴム堰などが可動堰に該当します。
頭首工の種類や特徴について、詳しくご説明をしていきます。
上下開閉式|スライド形式
用水路の頭・首の部分を示す頭首工。
水門ゲートを上下させて水の流れを調整するのが、上下開閉式と分類されるものです。
ゲートをレールに沿って上下に動かして開閉させるので、スライド形式と呼ばれます。
操作性が良く、維持管理もしやすいため多くの頭首工で採用されています。
スライドゲート

スライドゲートは、ドアを持ち上げるように開閉させながら水を止める仕組みです。
仕組みがシンプルで水位調整がしやすいのが特徴ですが、水の力が強くなりすぎる、水量が多すぎる頭首工には向きません。
水量が多くない、流れが穏やかな川に向いているのがスライドゲートで、大きな水門には不向きです。
開閉装置には、スピンドル式、ラック式又は油圧シリンダ式が用いられます。
角落し

角落しは普段使うゲートではなく、修理の時に水を止める仮のためのゲートです。
板を上から溝に差し込んでいく仕組みで、水の流れを段階的に遮断できるようになっています。
構造としてはスライドゲートと同じく上下方向に板を動かす仕組みで、簡易的なスライド形式の一種であるといえます。
小規模施設や細かな水位調整が必要な時に活躍します。
他の修理用ゲートとして、水に浮かべて使うフローティングタイプや大きな板で一気に水を止める盾タイプも覚えておきましょう。
上下開閉式|ローラー形式
スライド形式は扉をそのまま上下させて開閉させるタイプでしたが、ローラー形式とはローラーを使って車輪の力で転がしながらゲートを開閉させるものです。
スライド形式よりも大規模な施設で用いられ、
大きな水圧がかかっても操作しやすいという特徴があります。
ローラー形式の種類について、詳しく確認していきましょう。
- ローラーゲート(ガータ)
- 長径間ローラゲート(シェルタイプ)
- 2 段式ローラゲート
ローラーゲート(ガータ)

最も標準的で多くの頭首工で用いられているのが、ローラーゲート(ガータ)です。
扉の両側にあるローラーを転がしながらゲートを上下させていきますので、スライドゲートよりも負荷がかかりにくいのが特徴です。
構造が比較的シンプルで信頼性も高く、維持管理がしやすい点も多くの現場で選ばれている理由のひとつです。
ローラー形式の基本形として覚えておきましょう。
長径間ローラゲート(シェルタイプ)

長径間(ちょうけいかん)という名前の通り、幅が
広い川にも対応できるのが長径間ローラーゲート(シェルタイプ)と呼ばれるものです。
川の横幅が長いと、水圧が集中したり、真ん中がたわんでしまい、水量の調節が難しくなってしまいますので、長径間ローラゲートを採用します。
川の水量や水圧によって異なりますが、おおよそ川幅が30メートル以上になると長径間扱いになります。
2 段式ローラゲート

水位差が大きい、水圧が強い条件の現場に用いられるのが2段式ローラーゲートです。
ゲートを2つ設置するローラーゲートで、水圧を分散させるので、1枚あたりの負担が小さくなります。
そのため開閉時の操作性が向上して、設備の負担軽減にも貢献します。
高水位時と低水位時でゲートを使い分けるという方法もあり、水位調節の自由度が高いのも魅力です。
ただし構造が複雑なタイプのため、設置や維持のためのコストは大きくなります。
ヒンジ形式
ヒンジとは、ドアや家具についている”ちょうつがい”を指します。
日常生活にも身近なちょうつがいの原理を活用したのが、ヒンジ形式です。
ゲートの一点を支点にして回転させて、ドアを開閉するようなイメージです。
ヒンジ形式には細かく分類すると3つのタイプがありますので、それぞれご紹介します。
- ラジアルゲート
- 起伏ゲート
- ゴム袋体支持式鋼製起伏ゲート(SR堰)
ラジアルゲート

トラニオンピンという支点となる部分を中心に、円弧状の扉を回転させて開閉するのがラジアルゲートです。
スライドゲートのようなレールが不要で、回転して開閉するというのが特徴です。
水の力を受け流しやすく、比較的小さな力でも開閉が可能です。
水深が深い、水位差が大きい現場に向いているのが、ラジアルゲートです。
起伏ゲート

起伏ゲートとは、下の部分を起点にして開閉するゲートです。
軽量でシンプルな構造の起伏ゲートのひとつに、転倒ゲートがあります。
扉体構造の違いで、図のようにトルク軸タイプ、横主桁タイプ、魚腹タイプに分かれます。
トルク軸タイプとは、ゲートの中に太い軸(トルク軸)が通っているもの。
横主桁(よこしゅげた)タイプとは、スキンプレートに横向きの骨が何本か入っているもの。
魚腹(ぎょふく)タイプとは、膨らんだ形の骨が入ったものです。
トルク軸タイプは、シンプルで小さめのゲートに向いています。
横主桁タイプは中規模に、魚腹タイプは強度が強いので大きな水圧に対応したい現場で選択します。
ゴム袋体支持式鋼製起伏ゲート(SR堰)

一般的な起伏ゲートは油圧シリンダで稼働させます。
ヒンジ式のゲートをゴム袋の膨張・収縮によって開閉させるのが、ゴム袋体支持式鋼製起伏ゲートです。
ゲートの裏側にゴム袋がついていて、ヒンジ式の要領で鋼製のゲートを起こしたり倒したりします。
Steel(鋼)とRubber(ゴム)の頭文字をとって、SR堰とも呼ばれます。
鋼製ゲートの強さとゴム堰の柔軟さを兼ね備えており、堰の高さが3m程度の小規模な河川で使用されます。
ゴム袋体形式|ゴム堰(ゴム引布製起伏ゲート)
ゴム引布製起伏ゲートは、板の扉がなくゴムそのものが膨らんで水を止めるゲートです。
風船で水をせき止めるようなイメージで、空気を入れれば膨らんで水を止め、水を流したい時には空気を抜くという仕組みです。
ゴムなのでやわらかく壊れにくく、流木がぶつかっても破損の心配はありませんし、地震にも強いです。
工事が早いというメリットがありますが、細かな水位調節が求められる現場には不向きです。
バルブ形式
バルブとは流す・止めるを操作する装置を指し、身近なものでいうと水道の蛇口やガス栓がバルブの一種となります。
このバルブを使ったバルブ形式は、ゲートバルブとバタフライバルブです。
- ゲートバルブ(スルースバルブ)
- バタフライバルブ
ゲートバルブ(スルースバルブ)

ゲートバルブ(スルースバルブ)とは、水の通り道を板のような扉でせき止めたり流したりする装置です。
構造はスライドゲートと似ていて、よりコンパクトな場所で使われるのがゲートバルブ(スルースバルブ)です。
管の中や小さな樋管で使われるのがゲートバルブ(スルースバルブ)で、頭首工本体に使われるゲートではありません。
補助的な止水・流量調整用と認識しておくといいでしょう。
バタフライバルブ
円盤が中心の軸で回転して、水を流したり止めたりする装置です。
上から見た時に円盤が羽根のように見えるので、バタフライバルブという名前になりました。
管の中が小さい、より早く開閉させたい、半開にするなどの細かな調整をしたい時にバタフライバルブが向いています。
支持方式による分類
ここまでは頭首工ゲートの構造や、開閉方法についてという目線でお話ししてきました。
頭首工の種類を、設置や支え方の方法による分類をしてみましょう。
支持方式で分類をすると、フローティングタイプとフィックスタイプに分けられます。
- フローティングタイプ
- フィックスタイプ
フローティングタイプ
修理用のゲートとしてご紹介したフローティングタイプは、その名前の通り水に浮かぶゲートです。
水位変化で自動に上下するので、自動水位調節用に用いられる場合があります。
水流や衝撃に弱いので、短期間や修理用としての使い方が主です。
常設で大型ゲートに使用したい場合は、耐久性や衝撃対策をしっかり考える必要があります。
フィックスタイプ
ヒンジなどの固定された支点で支えられているゲートをフィックスタイプと呼びます。
本記事でご紹介したゲートは、スライドゲート、ローラーゲート、ラジアルゲート、起伏ゲート、SR堰など、ほぼフィックスタイプに分類されます。
水位や流量が正確に調整できますし、安定性が高いので、頭首工のゲートはフィックスタイプが多いです。
頭首工の操作方法

頭首工を操作する方法についてお伝えします。
ゴム堰・SR堰のように空気で操作する方法もお伝えしましたが、一般的な方法としては以下の4種類の方法があります。
- ワイヤーロープ式(電動巻上式)
- 油圧シリンダ式(油圧方式)
- スピンドル式(回転軸式・手動・機械式)
- ラック式(ギア式)
ワイヤーロープ式(電動巻上式)
頭首工の多くではワイヤーロープ式を用いており、電動でワイヤーを持ち上げてゲートを開閉・起伏していきます。
油圧式よりも構造がシンプルで、設置も維持費も安価に抑えられるメリットがあります。
中間開度での流量調節が可能ですが、ワイヤーロープは消耗品なので定期的なメンテナンスが欠かせません。
油圧シリンダ式(油圧方式)
油圧シリンダの力でゲートを開閉・起伏させる方法です。
大きな力で押し・引きができるので、大規模なゲートでも安定した稼働ができます。
川幅が広く、水圧が高いゲートほどメリットが大きくなり、大型で重たいゲートで選ばれます。
スピンドル式(回転軸式・手動・機械式)
スピンドル(回転軸)を用いてゲートを開閉・起伏する方法です。
スピンドル式の中でも、回転軸式・手動・機械式があり、手動にするか電動にするかは現場によりけりです。
小型・中型ゲートや点検用ゲートでよく用いられる方法です。
ラック式(ギア式)
ギアを回すとラックが動き、扉体が開閉・起伏する仕組みで、手動でも電動でも駆動可能です。
小型・中型ゲートでよく採用される方法で、信頼性が高く、長期間の運用に適しています。
スライドゲート、ローラーゲート、起伏ゲートで広く使われています。
頭首工に関するお悩みは朝水技研に
頭首工の選定や操作については、プロに相談をするのが1番です。
ご紹介したように種類がたくさんありますが、好き嫌いで選ぶものではなく、目的や用途に合わせて選ぶものだからです。
頭首工のゲートは、水圧や川の条件に合うタイプを選ばなければいけないのは言うまでもありませんが、これらを正しく判断するのは容易ではありません。
頭首工ゲートの種類だけでなく、操作方法や駆動方式までも適切に選ばなければいけません。
さらには、設置させるだけでなく、メンテナンスや維持という面でもフォローが必要です。
頭首工に関するお悩みがあれば、ぜひ朝水技研にご相談ください。