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灌漑農業とは?主要の灌漑方式やメリット・デメリットについて

灌漑農業とは

日本だけでなく世界でも古くから取り入れられている灌漑農業。

灌漑とは人工的に水をひいて農作物を育てる方法で、灌漑農業を行えば乾燥地帯でも農作物が育成できるようになったり、従来では不向きだといわれていた作物も作れるようになるかもしれません。

灌漑には、いくつか方式があります。

地形や育てる農作物に応じて、適切な灌漑方式を選んでいかなければいけません。

この記事では、主な灌漑の方式や、灌漑農業のメリットやデメリットについてお伝えしていきます。

灌漑(かんがい)農業とは

灌漑(かんがい)とは、人工的に水路を作り、田畑に水を引く農業技術です。

灌漑農業の役割や歴史など、基礎知識についてご説明します。

  • 灌漑農業の役割
  • 水田灌漑と畑地灌漑
  • 灌漑農業の歴史
  • 日本の灌漑農業

灌漑農業の役割

灌漑とは、農業や植物に人工的に水を供給する技術です。

農作物を育てるのに水は欠かせませんが、雨を待っていると天候に左右され、農作物がうまく育たなくなってしまうかもしれません。

灌漑農業を行うと安定的に水を供給できるようになり、天候に依存せずに農作物を効率的に育てられるようになります。

農作物が継続して収穫できるようになると、食料の安定供給にも貢献できるようになります。

水田灌漑と畑地灌漑

水田灌漑と畑地灌漑

灌漑農業は、水田灌漑と畑地灌漑に分けられます。

水田灌漑 畑地灌漑
作物 稲など 果物・野菜など
水の使い方 田んぼに水を溜める 土に染み込ませる
主な方法 土壌表面灌漑

溝灌漑

スプリンクラー

滴下灌漑

畝灌漑

このように作りたい作物によって、水の使い方が異なり、灌漑の方式が異なります。

日本では水田灌漑が多く占めており、長い歴史の中で全国に農業用の用水ネットワークが張り巡らされています。

灌漑農業の歴史

世界で灌漑農業がスタートしたのは、紀元前5500年頃と古く、メソポタミア地域やナイル川流域のエジプトであると考えられています。

パプアニューギニアにあるクックの初期農耕遺跡は、現在では世界遺産となっています。

日本では佐賀県の菜畑(なばたけ)遺跡に、縄文時代末期から弥生時代中期の水田跡が残っています。

菜畑遺跡は日本の稲作の始まりを語る遺跡で、日本最古の水田跡です。
参照:国指定史跡 菜畑遺跡 | 唐津市

日本の灌漑農業

日本では、年間600億m3近くが農業用水として取水されています。

縄文時代末期から日本でも取り入れられていた灌漑農業のための農業用用排水路のネットワークの長さは、地球10周分に相当する延長40万キロに及ぶともいわれています。

河川から取水され、用水路から水田に貯められた水は、下流域で再度利用を何度も繰り返し、流域全体で効率良く反復利用されています。

参照:農林水産省|日本のかんがいの 特徴と最近の課題

主要灌漑方式について

灌漑方式

灌漑には、いくつか方式があります。

ここでは主要な5つの灌漑方式について、ご説明します。

  • 土壌表面灌漑(表面灌漑)
  • 噴霧灌漑(スプリンクラー灌漑)
  • 滴下灌漑(ドリップ灌漑)
  • 地下灌漑(サブサーフェス灌漑)
  • 溝灌漑(フラッド灌漑の一種)

土壌表面灌漑(表面灌漑)

土壌表面灌漑(表面灌漑)とは、農地の表面に水を流して農作物に水を行きわたらせる灌漑方式です。

世界最古の灌漑方式といわれ、昔ながらのシンプルな灌漑方法であるといえます。

水を表面にそのまま流すので、広い面積の土地に適用できます。

ただし均一に水を行きわたらせるのは難しく、水の無駄が出てしまうのが懸念点となります。

噴霧灌漑(スプリンクラー灌漑)

噴霧灌漑(スプリンクラー灌漑)

噴霧灌漑(スプリンクラー灌漑)とは、作物の上からスプリンクラーで人工的に雨を降らせる灌漑方式です。

広範囲に水を行きわたらせるのはもちろん、無駄なく効率的に水を供給できる方法です。

蒸発ロスが起きやすい方法ではありますが、傾斜地など場所を選ばずに設置できるというメリットがあります。

滴下灌漑(ドリップ灌漑)

滴下灌漑(ドリップ灌漑)とは、ホースやチューブの小さな穴から点滴のようにポタポタと水を供給する灌漑方式です。

灌漑方式の中では水の無駄が最も少なく、高効率的に作物の根元に水の供給ができます。

初期費用がかかる、メンテナンスが必要という手間はかかりますが、肥料を一緒に送り込むという手法が可能なのでメリットは大きいです。

地下灌漑(サブサーフェス灌漑)

地下灌漑(サブサーフェス灌漑)とは、パイプや暗渠(あんきょ)を地下に埋設し、作物の根域に水を供給する灌漑方式です。

地表から水を送るのではなく、地下から水をしみ上げさせるという方法です。

パイプを埋設するのでメンテナンスは大変ですが、蒸発損失が非常に小さく、水源を効率的に
活用できる方法です。

溝灌漑(フラッド灌漑の一種)

溝灌漑(フラッド灌漑の一種)とは、その名前の通り溝を作って水を供給する灌漑方式です。

表面灌漑のタイプのひとつであり、水田でも田畑でも活用できます。

仕組みはシンプルで初期費用は比較的低コストなので、導入しやすい灌漑方式のひとつといえるでしょう。

灌漑農業を行うメリット

灌漑農業メリット

日本の農家では多くの割合で灌漑を取り入れています。

灌漑農業を行うと、以下のようなメリットがあるためです。

  • 乾燥地帯でも農業が可能に
  • 水源を効率よく活用できる
  • 土壌を守れる
  • 農作物の生産により地域の活性化

乾燥地帯でも農業が可能に

灌漑農業を行うと、水の供給が難しい地域でも安定して水の供給ができるようになります。

乾燥地帯や水不足が懸念される地域や時期でも、農作物の根に水が届けられるので収穫量が安定します。

作物を生育できる期間が増加するという理由からも、収穫量アップが見込めるでしょう。

その土地に不向きだとされていた作物でも、灌漑設備があれば生育が可能になる場合があります。

水源を効率よく活用できる

灌漑設備では水を循環させて反復利用し、無駄なく活用できるシステムとなっています。

ただ水を大量に使って流すだけのシステムだと、水の無駄使いとなり、地域の水不足問題につながりかねません。

水は農業に欠かせない資源です。

その土地や育てる農作物にとってベストな灌漑方式を採用し、最大限無駄のないシステムを作っていく必要があるといえるでしょう。

土壌を守れる

灌漑はただ単純に農作物のために水を供給するだけでなく、土壌の風化や砂漠化を防ぐという役割も担っています。

水の供給がなく乾いた土地では表面の土が風で巻き上げられて、失われてしまいます。

そんな乾いた土地に雨が降ると水が染み込みにくくなり、表面が削られてしまうという懸念があります。

灌漑で安定的に水を供給すると、その土壌にとっても良い状態を維持できるようになるのです。

農作物の生産により地域の活性化

灌漑設備によって、その土地では難しいとされていた農作物が生産できるようになると収入アップにつながります。

灌漑設備のためのインフラが整いますし、メンテナンスや維持のための雇用も生まれます。

灌漑設備で農作物が多く収穫できるようになると、このような地域活性化にも繋がり、人が集まるエリアへと発展していくでしょう。

灌漑農業を行うデメリット

灌漑農業デメリット

灌漑農業を行うのにはメリットがある一方、デメリットもあります。

メリットだけでなくデメリットを正しく理解し、灌漑設備を導入していくかを決めてください。

  • 塩分濃度が高くなり農作物に影響が
  • 地下水が枯渇する懸念
  • 水質汚染の原因に
  • 施設維持の経済的な負担

塩分濃度が高くなり農作物に影響が

灌漑で使われる井戸水や地下水には、微量の塩分が含まれる場合があります。

灌漑で供給した水が蒸発し水分だけがなくなると、塩分だけが土壌に残ってしまいます。

特に雨が少ない地域だと塩分が流されにくく、塩分が土に残りやすい環境といえます。

これを放置しておくと農作物が育ちにくくなるだけでなく、土壌の劣化が心配です。

良質な水を使用する、排水設備を整えるなどして、適切に水を供給できるようにしていかなければいけません。

地下水が枯渇する懸念

井戸やポンプで過剰に揚水すると、地下水位が枯渇して井戸が枯れてしまうかもしれません。

雨水の浸透など自然の地下水供給よりも使用ペースが早ければ、必然的に地下水が枯渇してしまいます。

特に土壌表面灌漑のような水を大量に使用する灌漑方式だと、地下水への負担が大きくなると考えられます。

地下水を利用する場合は、地下水位のモニタリングを行う、滴下灌漑に切り替えるなど、地下水に負担のかからない方法を選ぶといいでしょう。

水質汚染の原因に

農作物を育てるためには、水だけでなく肥料も必要です。

土に散布した肥料や農薬が溶けて流れ出てしまう可能性があり、灌漑が水質汚染の原因になってしまうかもしれません。

特に土壌表面灌漑は肥料や農薬が流れやすい構造であり、滴下灌漑や地下灌漑だとそのリスクは低くなります。

灌漑方式の選定や管理方法によって防げる問題なので、適切に設備を取り扱うようにしてください。

施設維持の経済的な負担

灌漑設備を導入するには、まず初期費用がかかります。

さらに電力費や燃料費といった維持費、ドリッパーやバルブの点検・交換などが適宜必要になってきます。

また専門的な知識と技術を持つ人が必要になり、人件費がかかってきます。

台風などの不測の事態が起きれば、都度対応していかなければいけません。

灌漑設備を導入すると多くのメリットが見込めますが、初期費用だけでなく、長期的な経済的負担がかかると覚えておきましょう。

灌漑農業とオアシス農業の違い

灌漑農業とオアシス農業

灌漑農業と混同されやすいのがオアシス農業です。

オアシス農業とは、砂漠や乾燥地帯にある「オアシス」を利用して行われる農業を指します。

オアシス農業は限られた自然の水源を利用しており、効率よく水を使うという点が灌漑農業よりもシビアです。

農地の周辺に樹木や草木が育つため、オアシス農業は自然環境の保護や生態系の保護という役割も担っています。

朝水技研×灌漑農業

朝水技研では、灌漑農業のための揚水ポンプや排水ポンプを取り扱っています。

設計・施工及び維持管理までトータルでサポートできるのが、朝水技研の強味です。

灌漑農業を支える揚水ポンプ・排水ポンプについて、ご紹介します。

  • 揚水ポンプ
  • 排水ポンプ

揚水ポンプ

揚水ポンプとは井戸や地下水などから水を吸い上げて、農地へ送る機械です。

高低差のある土地では自然流下だけで水を供給するのは難しい場合がありますので、揚水ポンプを使って水を運びます。

水源と農地をつなぐライフラインのような役割をしてくれるのが、揚水ポンプです。

排水ポンプ

灌漑設備を整えるには、排水ポンプが必要になる場合があります。

自然排水が可能で、水が自然に流れていく地形であれば排水ポンプは必ずしも必要ではありません。

環境によっては、排水ポンプがないと水が貯まりすぎてしまい、根腐れが起こるなどして作物が育ちません。

水の流れを管理できるようになるので、水の排出で土壌中の塩分を洗い流す効果も期待できます。

灌漑農業に関するよくある質問

灌漑農業よくある質問

灌漑農業に関する質問について、まとめました。

  • ポンプがないと灌漑できませんか?
  • 排水ポンプはいつ使いますか?
  • 設置や管理を業者に依頼できますか?

ポンプがないと灌漑できませんか?

必ずしもポンプがないと灌漑できないというわけではありません。

例えば水源が農地よりも高い位置にあり、自然流下が可能であれば必ずしもポンプが必要とはいえません。

しかし農地の条件や灌漑方式などによって、ポンプが必要になるケースがほとんどです。

排水ポンプはいつ使いますか?

排水ポンプは、貯まりすぎた水を調整するためのものです。

根腐や作物の生育障害を防ぐ、豪雨や台風などの災害時に水を人工的に排水する時に使用します。

排水ポンプがあると、状況に合わせて水の水位を自由にコントロールできるようになります。

設置や管理を業者に依頼できますか?

はい、依頼できます。

揚水ポンプや排水ポンプの設置や管理、維持などは朝水技研にご相談ください。

灌漑農業で潤いある農業を

灌漑農業は、人工的に水をひいて農作物に水を供給する農業です。

乾燥地域でも農業が可能になる、水を効率よく
活用できるといったメリットがありますが、水質汚染や塩分濃度のデメリットもあります。

ただしこれらのデメリットは、正しく灌漑設備を設置し対策をしていけば防げる場合があります。

このようなデメリットがあると理解し、どう対応していくべきかも考えていきましょう。

揚水ポンプや排水ポンプの設置や管理などに関して疑問点があれば、朝水技研にご相談ください。

 

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