電気工事施工管理技士の実務経験とは?新旧受検資格や実務経験証明書の作成について
電気工事施工管理技士の第二検定を受けるには、実務経験が必要です。
ただしどんな業務でも”実務経験”として認められるわけではありませんので、実務経験について正しく理解をしておかなければいけません。
電気工事施工管理技士の受検資格は改定されており、令和5年以前と令和6年以降で異なります。
該当する受検資格を正しく確認し、実務経験についても的確に記載できるようにしておきましょう。
実務経験証明書作成の注意点についてもまとめました。
電気工事施工管理技士について
電気工事施工管理技師とは、建設業法により規定される国家資格のひとつです。
建設や農業の現場で電気工事が安全に進行できるよう管理をする技術者です。
まずは電気工事施工管理技士の基本的な知識についてお伝えします。
- 電気工事施工管理技士の資格とは
- 電気工事施工管理技士1級と2級
- 施工管理と現場監督の違い
電気工事施工管理技士の資格とは

建設や農業の現場で電気設備工事の計画・管理・監理を管理するのが、電気工事施工管理技士です。
建設現場でのみならず、農業の現場でも電気工事が欠かせません。
建設業においては営業所ごとに選任の技術者をおかなければならないという規定がありますので、食いっぱぐれない資格といっても過言ではないでしょう。
電気工事施工管理技士1級と2級
電気工事施工管理技士の1級と2級では、1級の方が難易度が高く、取得が難しい資格となります。
保持している級によって、監理技術者に認定されるかどうかが大きな違いです。
| 1級電気工事施工管理技士 | 2級電気工事施工管理技士 | |
| 監理技術者 | 認められる | 認められない |
| 主任技術者 | 認められる | 認められる |
| 現場規模 | 大規模まで可 | 小規模~中規模中心 |
1級も2級も第一次検定と第二次検定があり、合格すると以下のような国家資格を保持できるようになります。
| 級・検定 | 国家資格 |
| 電気工事施工管理技士2級 第一検定 | 2級電気工事施工管理技士補 |
| 電気工事施工管理技士2級 第二検定 | 2級電気工事施工管理技士 |
| 電気工事施工管理技士1級 第一検定 | 1級電気工事施工管理技士補 |
| 電気工事施工管理技士1級 第二検定 | 1級電気工事施工管理技士 |
施工管理と現場監督の違い
電気工事施工管理技士は、建設工事等の計画・管理・監理を管理する資格です。
「現場監督がいれば電気工事施工管理技士は不要なのでは?」と感じる方がいるかもしれません。
確かに現場監督も現場がスムーズに進行できるよう管理をするという点では重複しますが、現場監督は主に作業を管理します。
電気工事施工管理技士は、施工計画から予算や安全管理など全体的に全ての事項を管理します。
令和6年度に電気工事施工管理技士検定の受検資格が改正

電気施工管理技士の受検資格は、令和6年度より改定されました。
これから資格を取得する方は、新しい受検資格に沿って受検すれば問題ありません。
旧受検資格は、経過措置により令和10年度まで受検可能です。
令和11年度以後は新受検資格のみとなります。
2級電気工事施工管理技士の新旧受検資格
2級電気工事施工管理技士の新旧受検資格について、ご説明します。
- 令和5年以前|2級電気施工管理技士に必要だった受検資格
- 令和6年以降|2級電気施工管理技士に必要な受検資格
令和5年以前|2級電気施工管理技士に必要だった受検資格
2級電気施工管理技士の第一次検定は、試験実施年度に満17歳以上となる者が対象で、新旧共に同様です。
第二次検定の受検資格が新旧で異なりますので、確認しておかなければいけません。
令和5年以前、改定前は以下のように2級電気施工管理技士の第二次検定の受検資格が決められていました。
| 区分 | 学歴・称号・資格 | 必要実務経験 | |
| 指定学科 | 指定学科以外 | ||
| イ | 大学 専門学校の「高度専門士」 |
卒業後
1年以上 |
卒業後
1年6ヶ月以上 |
| 短期大学、高等専門学校(5年制)
専門学校の「専門士」 |
卒業後
2年以上 |
卒業後
3年以上 |
|
| 高等学校、中等教育学校
専門学校の専門課程 |
卒業後
3年以上 |
卒業後
4年6ヶ月以上 |
|
| その他(最終学歴問わず) | 通算8年以上 | ||
参照:一般財団法人建設業振興基金施工管理技術検定|2級 電気工事施工管理技術検定のご案内
令和6年以降|2級電気施工管理技士に必要な受検資格
| 区分 | 必要実務経験 |
| 1 | 2級電気工事施工管理技術検定 第一次検定合格後、
実務経験3年以上 |
| 2 | 1級電気工事施工管理技術検定 第一次検定合格後、
実務経験1年以上 |
| 3 | 電気工事士試験または電気主任技術者試験の合格後または免状交付後、
実務経験1年以上 ※別途、2級 または 1級電気工事施工管理技術検定 第一次検定 の合格が必要 |
参照:一般財団法人建設業振興基金施工管理技術検定|2級 電気工事施工管理技術検定のご案内
令和5年以前は大学、短大高専、高等学校などの
学歴によって必要実務経験が細かく指定されていましたが、令和6年以降は実務経験がより重視されるようになりました。
1級電気工事施工管理技士の新旧受検資格

1級電気工事施工管理技士の新旧受検資格について、ご説明します。
- 令和5年以前|1級電気施工管理技士に必要だった受検資格
- 令和6年以降|1級電気施工管理技士に必要な受検資格
令和5年以前|1級電気施工管理技士に必要だった受検資格
1級電気施工管理技術者の第一検定は、新旧共に試験実施年度に満19歳以上となる者が対象です。
第二検定を受けるには、1級電気工事施工管理技術検定第一次検定または技術士に合格した上で、以下の資格を満たさなければいけませんでした。
| 区分 | 学歴・称号・資格 | 必要実務経験 | |
| 指定学科 | 指定学科以外 | ||
| イ | 大学
専門学校の「高度専門士」 |
卒業後
3年以上 |
卒業後
4年6ヶ月以上 |
| 短期大学、高等専門学校(5年制)
専門学校の「専門士」 |
卒業後
5年以上 |
卒業後
7年6ヶ月以上 |
|
| 高等学校、中等教育学校
専門学校の専門課程 |
卒業後
10年以上 |
卒業後
11年6ヶ月以上 |
|
| その他(最終学歴問わず) | 通算15年以上 | ||
参照:一般財団法人建設業振興基金施工管理技術検定|1級 電気工事施工管理技術検定のご案内
令和6年以降|1級電気施工管理技士に必要な受検資格
令和6年以降、1級電気施工管理技術士の第二検定を受けるには、以下の資格を満たす必要があります。
| 【区分1】
1級第一次検定合格者 |
必要実務経験 |
| 1-1 | 1級電気工事第一次検定合格後
実務経験5年以上 |
| 1-2 | 1級電気工事第一次検定合格後、
特定実務経験1年以上を含む 実務経験3年以上 |
| 1-3 | 1級電気工事第一次検定合格後
監理技術者補佐としての実務経験1年以上 |
参照:一般財団法人建設業振興基金施工管理技術検定|1級 電気工事施工管理技術検定のご案内
電気工事施工管理技士の実務経験とは
1級も2級も電気工事施工管理技士の受検に必須となるのが、実務経験です。
実務経験の内容は厳しく決められており、中には受検のための実務として認められない内容があります。
実務経験として認められる内容と、認められない内容を正しく確認しておきましょう。
- 実務経験として認められる内容
- 実務経験として認められない内容
実務経験として認められる内容
以下の内容が、実務経験として認められるものです。
施工管理・設計監理・施工監督という立場で従事した場合に、実務経験として認められます。
| 工事種別 | 工事内容 |
| 構内電気設備工事
(非常用電気設備を含む) |
建築物、トンネル、ダム等における
受変電設備工事、自家用発電設備工事、動力電源工事 等 |
| 発電設備工事 | 発電設備工事、発電機の据付後の試運転、調整 等 |
| 変電設備工事 | 変電設備工事、変電設備の据付後の試運転、調整 等 |
| 送配電線工事 | 架空送電線工事、架線工事、地中送電線工事 等 |
| 引込線工事 | 引込線工事 等 |
| 照明設備工事 | 屋外照明設備工事、街路灯工事、道路照明工事 等 |
| 信号設備工事 | 交通信号工事、交通情報・制御・表示装置工事 等 |
| 電車線工事 | (鉄道に伴う)変電所工事、発電機工事 等 |
| ネオン装置工事 | ネオン装置工事 等 |
参考:一般財団法人 電気工事技術者試験センター|電気工事施工管理に関する実務経験について
実務経験として認められない内容

一方、以下のような内容は実務経験とは認められませんので、注意が必要です。
- 発電機・変圧器等の設計・製造・据付・保守・点検・メンテナンス
- 電気通信工事として実施した電気通信線路設備工事
- 機械器具設置工事として実施したプラント設備工事
- 消防施設工事として実施した屋内消火栓設置工事
参考:一般財団法人 電気工事技術者試験センター|電気工事施工管理に関する実務経験について
このように、電気工事以外は実務経験とは認められませんので覚えておきましょう。
実務経験証明書の作成について
電気工事施工管理技士の実務経験証明書について確認しておきましょう。
実務経験を記す書類として、第二次検定の前に準備をします。
- 実務経験証明書に会社代表者の署名・押印を実務経験年数の計算に注意
実務経験証明書に会社代表者の署名・押印を
実務経験証明書は以下のような書式になっており、ダウンロードできます。
エクセル書式でもありますので、手書きでなくてもかまいません。

参照:一般財団法人建設業振興基金施工管理技術検定|新受検資格用 実務経験証明書
実務経験証明書は受験者本人が記入していきますが、会社代表者など証明者の署名や押印が必要となります。
実務経験年数の計算に注意
実務経験の経験年数を正しく記載しなければいけません。
受検のタイミングにより「〇月〇日までの実務経験を記載」とありますので、必ず確認しましょう。
予定されている実務経験の日にちを記載しても構いませんが、虚偽の申告をすると合格取り消しなどの受検禁止措置がとられる場合があります。
また複数の工事を同時期に担当した場合、重複しての申告ができませんので注意してください。
参考:一般財団法人 電気工事技術者試験センター|電気工事施工管理に関する実務経験について
1級電気工事施工管理技士を取得すると

令和6年度の1級電気工事施工管理技士合格率は、第一検定で36.7%、二次検定で49.6%でした。
参照:一般財団法人 電気工事技術者試験センター|令和6年度 1級電気工事施工管理技術検定 結果表
1級電気工事施工管理技士は難易度が高い資格であり、取得すると以下のようなメリットがあります。
- 仕事の幅が広がる
- 手当などで収入がアップする
- 知識と経験の証明になる
仕事の幅が広がる
主任技術者は2級・1級電気工事施工管理技士の資格があれば認められますが、監理技術者は1級電気工事施工管理技士でなければ認められません。
現場の責任者としての仕事の幅が広がり、キャリアアップが見込めます。
現場での重要な役割を担う立場であり、会社内での評価がアップしていくでしょう。
手当などで収入がアップする
1級電気工事施工管理技士を取得すると、さまざまな要因で収入アップが期待できます。
資格を取得すれば資格手当や責任手当がつく場合があります。
1級電気工事施工管理技士がいれば受注できる仕事が増える可能性がありますので、会社としての有資格者の存在が重要になります。
転職という市場でも有利な資格になると考えられます。
知識と経験の証明になる
1級電気工事施工管理技士は実務経験がないと受検できないので、資格を保持しているだけで知識と経験の証明になります。
電気工事の知識を網羅していると相手に伝わり、会社からだけでなく行政からも信頼できる技術者として認められます。
資格取得に適した環境を整えよう
2級・1級電気工事施工管理技士の資格を目指しているのであれば、資格取得に前向きな会社で働くのがおすすめです。
朝水技研では社員の資格取得に力を入れており、「資格取得にかかる費用は全額会社負担」などの福利厚生が充実しています。
知識を身につけて資格を取得するのは、安全に仕事を進めるうえで欠かせず、現場で働く社員一人ひとりの安全を守るためにも重要です。
実務経験を積んで電気工事施工管理技士を目指そう
電気工事施工管理技士の実務経験としては、管理業務を伴う実務経験が求められます。
令和5年以前と令和6年以降では内容が異なりますので、ご自身がどの区分で受検するのかを確認するようにしてください。
特に令和5年以前に第一検定を受け、令和6年以降に第二検定を受ける場合は、令和10年度までの経過措置により受検が可能です。
令和11年度になると経過措置はありませんので、注意してください。
電気工事施工管理技士は勉強量が多い資格ですが、現場経験があれば理解は難しくないでしょう。
過去問などを活用しながら実務経験を積んで、1年に1回(1級)の受検に臨んでください。