開渠とは?管渠との違いや使い分けについても徹底解説
開渠とは、地表面に設けられた人工的な水の通り道で、雨水や排水などを地上で流すために造られた構造物です。
一方、管渠は、水の流れを地中や構造物内で確保するための総称で、地面に埋められた給排水管や、道路の脇に設置される側溝なども含まれます。
本記事では、開渠・管渠について紹介します。
他にも「開渠水路の目的」や「管渠調査の方法」についても解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、開渠・管渠について理解を深めてみてください。
開渠とは?

開渠(かいきょ)とは、上部が開いている、または容易にふたを外すことができる構造の水路や側溝を指します。
別名として、「明渠(めいきょ)」とも呼ばれています。
このような水路は、主に農業や工業、家庭での使用、さらには産業インフラにおける給水や排水のために設けられます。
水道以外のライフラインは、基本的にふたが施されているので、開渠の形式とはなりません。
また、大規模な水路の運河なども、上にふたが無い構造であれば開渠と分類されます。
一方、水路にふたがされているものは「暗渠(あんきょ)」と呼ばれます。
開渠水路の目的

開渠水路の目的については、主に2つが挙げられます。
- 農業用水の供給
- 排水の流下経路
それぞれの目的について解説していきます。
農業用水の供給
開渠水路は、農業における水の安定供給を支える重要なインフラです。
農作物の育成には一定量の水が欠かせず、水田や畑に計画的に水を届けるためには、開渠式の水路が有効です。
水源から農地へと水を運ぶ役割を果たし、地域の地形に適応した設計をすることで、自然な傾斜を利用し、ポンプなどの動力を使わずに水を流すことが可能です。
そのため、エネルギー面でも無駄が少ないしくみとなっています。
さらに、開渠水路は構造が比較的単純なので、点検や修繕といった保守管理もおこないやすく、長年にわたって多くの農村で活用されてきました。
排水の流下経路
都市や住宅地においては、雨水や生活排水を効率的に処理するために、開渠水路が導入されることがあります。
具体的には、コンクリートで造られたU字溝や側溝などが道路や建物周辺に設けられ、降雨によって発生した水を集めて排水施設へと誘導します。
こうした仕組みは、特に集中豪雨の際に大量の水を排出することで、浸水被害や洪水の発生を防ぎ、地域住民の生活環境や安全を守るという重要な役割を担っています。
開渠水路以外の種類

開渠水路以外の種類については、以下の3つが挙げられます。
- 種類①:暗渠水路
- 種類②:側溝水路
- 種類③:明渠水路
それぞれの種類について解説していきます。
種類①:暗渠水路
暗渠水路とは、地中に埋められた形で水を通す構造を指し、地表に開かれた水路の開渠とは対照的になります。
両者をまとめて「管渠」と呼ぶことが一般的で、水路の設計においては状況に応じて使い分けられます。
例えば、高速道路や鉄道の下を通すために設置されるトンネル状の構造物も大型の暗渠の一種と見られるケースもあります。
また、都市河川の暗渠化も、土地の有効活用や景観の再構築のためにおこなわれるケースもあります。
種類②:明渠水路
明渠は、一般的には「開渠」と同じ意味で使われる場合が多くありますが、文脈によっては、地表に設けられた排水路に限定して指すこともあります。
農業分野では、特に排水を目的とする場面で明渠が多く採用されており、蓋を設置するための費用や作業負担を省略できることがメリットです。
また、豪雨時の排水能力を高めることで作物の浸水被害を防ぎ、さらに夏季の地下水位の極端な低下を防止することで、農作物の品質維持や収穫量の安定化にもつながっています。
このように、明渠は農業の現場で実用的な役割を果たしていますが、肥料成分を含んだ水が流れ込むことで、下流域では悪臭の発生など環境への影響が懸念される場合もあります。
種類③:側溝水路
側溝水路は、私有地や道路上に降った雨水を排水するための設備で、溝渠と呼ばれることもあります。
一般的にU字型のコンクリート製カルバートが使われており、上部に設置する蓋の種類を工夫することで、歩行者用のスペースを確保したり、道路幅の調整に対応できるようになっています。
例えば、金属製の格子状グレーチングは、雨水を効率よく取り込みながら、日常的な清掃や点検を容易にする目的で設置されています。
こうした構造は、都市部や住宅地など、多くの人が利用する環境に適していると言えます。
管渠とは?

管渠とは、地上や地下に設けられた水の通り道全体を指す言葉で、主に上下水道の配管や側溝などが含まれます。
特に、地中に埋められた給水管や排水管、道路の脇に見られる開放的な水路なども含まれます。
こうした水路設備は、長期的に安定した機能を維持するために、定期的な点検・調査が不可欠です。
中でも下水道管は、地盤沈下や地震、振動といった自然・外部要因、硫化水素による腐食の影響を受けやすいので、損傷や劣化の有無を確認する調査が重要になります。
万が一、損傷を放置してしまうと、道路の陥没や地中汚染、交通事故といった深刻なトラブルにつながるおそれがあり、予防保全の観点からも定期的なチェックが求められます。
下水道管渠の工事方法

下水道管渠の工事方法については、以下の5つが挙げられます。
- 開削工法
- シールド工法
- 推進工法
- パイプ・イン・パイプ工法
- さや管内推進工法
それぞれの工事方法について解説していきます。
開削工法
管渠の設置にはさまざまな工法が用いられますが、その中でも一般的に採用されるのが「開削(かいさく)工法」と呼ばれる方法です。
比較的小さな直径の管を浅い地中に埋設する際に使われる基本的な手法です。
掘削の深さや掘る範囲の広さによって、現場で使用する工具や重機の種類は異なります。
具体的には、現場環境に応じて最適な方法を選ぶ必要があり、代表的な手法としては、「軽量鋼矢板を用いた建て込み工法」や、「簡易的な土留めを用いる建て込み工法」などが挙げられます。
これらの工法は、地盤の状態や作業スペース、安全面などを考慮しながら柔軟に使い分けられています。
シールド工法
シールド工法では、専用の掘削機を用いて地中にトンネルを掘り進める工法です。
作業と並行して、トンネルの内壁には「セグメント」と呼ばれる鋼製のパネルを円形に組み合わせて設置し、構造の安定を図ります。
トンネル掘削後、内壁の保護と水の流れを確保するために、セグメント内側にコンクリートを打設したり、プラスチックの複合パイプを挿入することで、下水道としての機能を持たせる仕上げが施されます。
このように、掘削と同時に壁面の構築をおこなうことで、地盤の崩壊を防ぎながら安全かつ効率的に下水道を構築することが可能になります。
推進工法
推進工法とは、あらかじめ工場で製造された推進用の管の先端に、掘削用の機械を装着し、地中を掘り進みながら下水道管を設置していく工法です。
施工は、地表に設けられた発進用の立坑からスタートし、後方に設置された油圧式のジャッキで管を前方へと押し出す形で進められます。
このような力を利用して、掘削と同時に地中へと確実に管を埋め込んでいきます。
パイプ・イン・パイプ工法
パイプ・イン・パイプ工法とは、既存の管の内部に新しい管を挿入して設置する技術です。主に老朽化した下水道管などの更新をおこなう際に使われる、非開削型手法の一つです。
地面を掘り返すことなく施工できる点が特徴で、工事による周辺への影響を最小限に抑えることが可能です。
また、非開削工法の中でも代表的な工法となっております。
さや管内推進工法
さや管推進工法は、小型かつ軽量でありながらパワフルな性能を活かし、鋼管を用いて地中を掘り進める方式です。
作業の安全性や操作のしやすさにも配慮されており、狭小地や多様な現場条件においても効率よく施工をおこなえる点が特徴です。
主に、掘進距離が20メートル以下の短距離施工に適しており、内部に挿入する塩ビ管によって多少の位置ずれにも柔軟に対応できます。
削進時には、この誤差が許容範囲に収まるよう慎重に調整がおこなわれます。
メリットとして、コアボーリング方式を採用しており、コンクリート構造物、N値50以上の硬い地層や人孔壁などの貫通も可能です。
開渠と管渠の違い

開渠と管渠の違いについては、以下のとおりです。
| 項目 | 開渠 | 管渠 |
| 構造 | 地表の水路 | 地中のパイプ状水路 |
| 用途 | 主に農業用水・排水 | 主に排水・都市下水道など |
| 維持管理 | しやすい(視認可能) | 専門的な点検が必要 |
| 建設コスト | 比較的低い | 比較的高い |
| 設置場所 | 農地や山間部など | 市街地や道路下など |
具体的な違いについては、下記にて解説していきます。
設計・施工面の違い
開渠の施工は、地表での作業が中心となるので、重機を使った掘削や型枠の設置といった工程で進められ、特別な専門技術がなくても対応しやすいのがメリットです。
しかし、ある程度の土地の広さが必要になるので、都市部やスペースが限られた地域では導入が難しくなるケースがあります。
一方、管渠では、地中に埋める形で設置される水路で、円形のパイプや四角いボックスカルバートなどが使われます。
水圧や流速などの詳細な設計が求められたり、施工には地中を掘る高度な技術や推進工法・開削工法といった特殊な工事方法が必要です。
そのため費用が高くなる傾向がありますが、地上部分を他の用途に活用できるので、土地の有効利用ができるメリットがあります。
維持管理コストの違い
開渠は、地表に開かれた構造なので、水の流れや状態を直接目で確認しやすく、日々の点検や清掃が比較的簡単におこなうことができます。
例えば、落ち葉やゴミの除去、水質のチェックといった作業が手軽におこなえるので、通常の維持管理にはそれほど高いコストがかかりません。
しかし、長年の使用により土砂が溜まったり、構造が劣化して修繕が必要になることもあり、その際には人手や時間がかかってしまうケースもあります。
また、不法投棄や動物の侵入、雑草の繁茂といった問題も起こりやすいので、トラブルに備えた管理対応が求められます。
一方、管渠は地下に設置しているので、普段の様子を直接確認するのが難しく、メンテナンスには専用の機器や専門の作業員が必要です。
特に、配管の詰まりや水漏れの兆候を早期に見つけるためには、内視鏡カメラを用いた点検や高圧洗浄などの作業を定期的に実施する必要があります。
そのため、維持にかかる費用は開渠に比べて高くなる傾向があります。
使用環境に応じた選び方
開渠は、自然の地形をそのまま活かして水を流せる構造で、まわりの風景や動植物との共存を図りやすいメリットがあります。
特に、水量が多く、水の動きを直接確認できる場所では、効果を発揮しやすくなります。
しかし、重力を使った流下を前提とするので、勾配が取れない平地や建物が密集する都市部では適用が難しい場合があります。
これに対して管渠は、都市インフラとしての下水道や工場・施設からの排水、雨水の排除といった用途で活用されています。
地下に管を通すことで、地形の影響を受けにくく、狭い場所でも効率的に配管ルートを設計できるのがメリットです。
また、においや音といった外部への影響を抑える性能も高く、住環境との相性にも優れています。
注意点として、急な大雨による増水時の対応などでは事前に十分な配慮が求められます。
農業における開渠と管渠の使い分け

農業分野における開渠と管渠の使い分けについては、以下の3つが挙げられます。
- 水田・畑地には開渠が一般的
- 地形やスペースの制約がある場合には管渠が有効
- 農業と都市開発が混在する地域では両者の併用も可能
それぞれの項目について解説していきます。
水田・畑地には開渠が一般的
水田や畑地が広がる地域では、開渠が広く利用されています。
開渠は、自然の地形や既存の川や用水を活かして作られ、古くから農村の暮らしとともに発展してきたインフラのひとつです。
魅力として、導入にかかるコストが比較的低く、維持・管理も地元住民が手作業で対応しやすい点にあります。
水田では特に、水位を安定させることが作物の生育に欠かせないので、水の流れを目で見て調節できる開渠が重要です。
また、開渠は生物多様性の観点でも価値があり、水辺を住処とするカエルや小魚などの生き物たちにとっても欠かせない環境となっているのも事実です。
このように、開渠は農業の利便性だけでなく、自然との共生などにも関わっています。
地形やスペースの制約がある場合には管渠が有効
地形が複雑で傾斜が急な地域や、限られた土地を最大限に活かしたい場面では、管渠の活用が有効です。
実際に、住宅が密集している場所や道路との交差点、急傾斜の農地など開渠では安定した水の流れを確保するのが難しい場所において、管渠はその課題を解決する手段として重宝されています。
また、地表を占有しないので、耕作面積を無駄にせずに済むメリットも挙げられます。
さらに、管渠は密閉されているので、落ち葉やゴミが侵入しにくく、内部の水路が清潔に保たれやすいという特徴もあります。
しかし、設置や管理には高度な施工技術と専門的な知識が求められるので、費用が高額になりやすいので、事前に確認しておくことが大切です。
農業と都市開発が混在する地域では両者の併用も可能
農業地域と都市開発が入り混じるような都市近郊や市街化調整区域などでは、開渠と管渠を組み合わせて利用する手法もあります。
具体的には、地域の特性に応じて水路の形態を使い分けます。
例えば、農地の中心部では開渠を使用し、住宅が立ち並ぶエリアや道路沿いでは、地中に設ける管渠に切り替えるといった柔軟な設計がおこなわれています。
このような、開渠と管渠を併用した水路整備は、機能性と環境保全の両立を図る上で非常に有効と言えます。
開渠・管渠は生活に欠かせないインフラ!

今回は、日常生活を支える重要なインフラ設備である開渠と管渠について紹介しました。
開渠は、雨水や生活排水などを地表で流すために設けられた水路のことで、主に農業用水の供給や排水に利用されます。
一方、管渠は、地中や建造物内の水路全体を指し、シールド工法や推進工法など、場所や状況に応じた多様な工法で設置されます。
土地が広く点検しやすい場所では「開渠」、都市部やスペースが限られた場所では「管渠」といったように、それぞれのメリットを活かした使い分けがなされています。
生活基盤を支えるこれらの設備は、安定した機能を維持するために、継続的な点検や計画的な修繕が不可欠です。本記事を参考に、インフラへの理解を深めていただければ幸いです。